建築条件付き注文住宅の3つのメリットと4つのデメリット

1. 建築条件付き住宅ってどんなもの?

『建築条件付き住宅』は、『注文住宅』と『分譲住宅』の中間イメージだ。「土地」の購入に制約が付いており、単純に土地を買うだけという事は出来ない。土地に定められた条件を飲める場合だけ土地を購入することが出来るのだ。
 

1.1 一般的な『建築条件』

 
良く採用される建築条件は以下の通りだ。
 
 
  •   指定のハウスメーカーから建設依頼先を選んでもらう
  •   3ヶ月以内に建て始められないと土地の契約は白紙にする
  •   白紙にする場合、土地の代金は全額返済する
 
 
 
 

1.2 ハウスメーカーが建築条件をつける理由

 
大規模開拓などで整地された土地を、ハウスメーカーが一括して買い上げ、それを一般向けに販売する。その上で、ただ販売するだけでは利益が薄いので、土地が売れた後、自社で建築が行える様に、土地の販売に条件を付けて、建築も請け負える様にしてあるのだ。
 

1.3 どの様な場所に多いのか

 
一般的に新しい街開きなど大規模な開発時に行われる事が多く、複数のハウスメーカーが協賛して開発し、買い手はその中から建設するハウスメーカーが選べる事もある。
 
 

2. 建築条件付き住宅のメリットは?

2.1 好きな仕様の家にできる

家を自分の好きな仕様の家が建てられるというのは、他では替えようがない重要なメリットと言えるだろう。建売で満足な家があればそれ越した事はない。しかし、せっかくの機会なのでオリジナルの家が欲しいという望みを叶えてくれるのが注文住宅だ。
 

2.2 土地にあわせて家の仕様を決められる

 

2.2.1 土地の条件は千差万別

 
土地には正方形の土地、長方形の土地などその形は様々だ。更に隣接する建物とその高さ、隣接する道路とその交通量、人通りの多さなど様々な要素が絡み合って存在している。
 
 

2.2.2 土地合わせた設計が必要

 
家を建てるにあたり、土地の形に合わせて家を作るのは基本中の基本だ。それ以外にも、隣接する建物により出来る影を計算して物干し場を考えたり、交通量や人通りが多い面にはすりガラスを採用して目線が通らない様にするなど、様々な工夫が必要になる。
 
 

2.2.3 分譲はハウスメーカーのセンス次第

 
もちろん分譲でも設計したハウスメーカーが十分に検討して建ててはいるが、それがあなたの好みに合うかはわからない。
 

2.2.4 建築条件付き注文住宅ならあなたの好み次第

 
一方、建築条件付き注文住宅なら、ハウスメーカーは指定されるものの、基本的に設計は自由に行える。隣接する家や道路などの土地の条件を見た上であなたの好みに間取りや窓の配置を決める事が出来るのだ。
 
 
 

2.3 土地取得から建築までがスムーズ

 

2.3.1 ポイントはハウスメーカーの土地理解度

 
建築条件として設定される『3ヶ月以内に建設契約をしなければならない』という条件は悪いことばかりではない。
 
販売側は予めその土地の素性を完璧に把握してから販売しているという事だ。
 
 

2.3.2 土地理解度が高いと短縮できる3つの工程

 
自分で気に入った土地を見つけ好みのハウスメーカーに見せる場合と比べて短縮できる工程があるのだ。具体的には以下の3つだ。
 
 
短縮できる工程
制約調査
地質調査
提案プラン作成
 

2.3.4 制約調査

その土地に課せられた規制に関する調査だ。
 
法律や自治体の制約で建てられる工法や面積、高さには必ず制約がある。家を建てるには重要な調査事項の一つだ。
 
建築条件付き注文住宅なら、制約は下調べが完了し、どういう制約があるのかハウスメーカー側がきっちり把握している。制約違反が発生し難いのが売りの一つだ。
 

2.3.5 地質調査

その昔、田んぼであった土地などは地面の耐久性が低く家を建てるには長い杭を打つなどの対策が必要になる。
 
あなたが独自に見つけた土地ならば土地の素性を見極めるため、地質調査が必要になるが、建築条件付き注文住宅なら、地質調査も完了している場合がほとんどだ。
 
ハウスメーカーも売った後に家を建てないと儲けがでないので、きっちり地質調査を済ませ、確実に売れるとわかっている土地を販売するのだ。
 
なお、地質調査は100万単位でかかる事もある為、ハウスメーカーが代替してくれるのは金銭的にとてもメリットがある。
 
 

2.3.6 提案プラン作成

注文住宅で理想の家のプランを練り上げていくには、まずあなたから大まかな要望のヒアリングを行い、その結果を基にハウスメーカーに家の間取りなどのサンプルを作ってもらい、それを下書きにあなたの好みで中身を変えていく事になる。
 
この下書きは適当ではなく、建築条件で定められた距離だけ道路や隣家と離すなど正しい情報に基づき作成されなければならない。
 
建築条件付き注文住宅なら、販売前にその土地にあったサンプルプランをハウスメーカー側で作ってくれているので、それを下敷きにすみやかにあなたの家の検討に移ることができる。
 
大したことが無いように感じるかもしれないが、土地を取得すると固定資産税がかかり始める。
 
制約の確認などで時間をかけてしまうとその分固定資産税を多く支払うことになりあなたの損になるのだ。
 
土地の固定資産税は土地により様々だが新興住宅地や都市部なら1ヶ月1万円以上はする事が多い。
 
ハウスメーカーに制約の無い注文住宅の場合、好みの家を建ててくれるハウスメーカーに巡り会える時期が遅れる程、固定資産税で建築資金が減っていってしまうのだ。
 
土地取得から短期間で設計に入れるところが建築条件付き注文住宅の魅力の一つだ。
 
 
 
 

3. 建築条件付き住宅のデメリットは?

 

3.1 費用が固定では無いので、仕様追加によって増額になりやすい

 

3.1.1 建設開始は土地代金を支払ってから

土地自体は価格が決まっており、契約すれば即その金額で決済し、登記を済ませて契約完了だ。建築条件付き注文住宅の場合、そこから注文住宅の建築がはじまる。土地で資金の約半分を使い果たしてから残った金額で建物を建てなければならない。
 
 

3.1.2 理想の家と費用との厳しい戦い

どうしても注文住宅だとお金さえかければ自分の理想をいくらでも追いかけることができる。こだわりを捨て切れず好みの家にするための仕様追加が発生しがちだ。
しかし、既に土地購入で資金は半減してしまっている。残された金額で理想の家を建てる必要があるが、お金さえかければ理想の仕様に出来る状況をみすみす見逃すのは並大抵の忍耐力では成し遂げられない。少しぐらいなら、と追加の出費を決めてしまうのだ。
 
 

3.1.3 追加仕様にはリスクが伴う

初めに土地と建物にかけられるお金を計画しても、家が完成するにつれ、どうしても追加で欲しい仕様が出てきてしまうものだ。家なんて何度も買えないし気に入った仕様にするには今しか無いと思うと、追加の出費は免れない。
しかし、追加の費用は生活費として残したお金から出る事を忘れてはならない。
追加仕様の出費に怯えないようにするには、最大限支出して良い金額、即ち3ヶ月程度の生活費を認識しておく必要がある。1月10万円必要なら3ヶ月で30万円は残しておかなければならない。この費用を超えては支出してはいけない一線を設けておけば、追加で欲しい仕様が出てきても安心して決定する事が出来る。
 
 

3.2 土地所有期間が長くなり税金が多くかかる

3.2.1 まずはあなたが土地を購入する必要あり

 
建築条件付き注文住宅の場合、まず土地を購入しあなたの物にする。それからハウスメーカーはあなたの希望を基に設計を行い建築を行う。
 
 

3.2.2 まず土地を購入させる訳

 
これは、ハウスメーカーが施主に途中で逃げ出されないようにする為と建築にかかる経費は施主持ちとするという理由から行われるのだ。
 
 

3.2.3 まだ住めない土地に固定資産税が発生

 
分譲では土地とともに建物も購入してすぐに住むことが出来るのに対し、建築条件付き注文住宅では建築条件完了までの間は住むことが出来ない土地に固定資産税を支払い続けなければならない。ハウスメーカーの制約が無いフリーの注文住宅よりは家の完成時期を早くする事ができるが、分譲と比べるとどうしても支払う固定資産税が追加コストとして上乗せになってしまうのだ。
 
 

3.3 建築するハウスメーカーが固定されてしまう

注文住宅は自分の好きな間取りや仕様で家を建てることが出来る。しかし、それも依頼するハウスメーカーによって出来映えは大きく異なる。建築条件付き注文住宅はハウスメーカーが予め複数、または一社に縛られているのが普通だ。限られたハウスメーカーで好みの家が建てられれば幸いだが、必ずしもそうならない場合も多いだろう。土地の販売元にいくらかを支払えば建築条件を解除してもらえる事もあるが、費用が余計にかかってしまうことは避けられない。
 
 
 

3.4 登記を二回行う必要がある

分譲であれば土地と建物の登記はまとめて一回で済ませることができる。しかし、建築条件付き注文住宅は以下の二回のタイミングで登記をしなくてはならない。
 
 
 
建築条件付き注文住宅の登記タイミング
  • 土地購入時
  • 建物完成時
 
 
登記が二回発生するのは面倒なだけでなく司法書士に支払う報酬も二回発生する事を意味する。
 
登記を行うと司法書士に手数料を支払わなければならないが、登記が2回に渡るとその費用も2回分かかってしまう。
具体的には『抵当権設定登記』と言われる登記作業が2回発生するが、私の例で行けば一回におよそ3万円程度の手数料がかかる。
1回ですめば3万円だが2回行うと6万円になってしまう。
 
分譲であれば登記が1度で済むのでこの手数料も1回分で良いのだ。